題名:「終焉と誕生」
ものには必ず、終焉がある。
この自動車も道路わきの雑木林に生い茂る草々の陰でひっそりとしていた。
もう役目を終えたようにみえる。
しかし、近づいてみると蜂の羽音がブンブンしている。
ガラスはすっかりと汚れ曇っているので中は見えないが、おそらく、蜂が巣を作り、運転席や座席、エンジンルーム、トランクなど、昆虫や小動物の住処となっているだろう。

新たなる生命の誕生があり、この強固な金属製の防御に守られて楽園となっているかもしれない。
一方が終焉となって、もう一方が誕生、発祥となる。
引き継がれたわけではない。
特に関連性もなく時間と存在が継続しているのだ。