橋が現れると渡らなければならない。
川の向こうには、確かに、見たこともないような景色があるはず。
わたり始めるとその中間点に必ず顔がある。
じっとこちらを向いて「後悔しないか?」と問う。
「帰れないかもしれないぞ。」と脅かす。

私は決して屈しない。
大股で彼の首を跨(また)いで突き進む。
ふと、振り返ると首は私を見ている。
如何にも哀れな奴だという表情だ。
何度振り返っても首は私を見ていた。
橋を渡り切ってもう一度振り返ると
首は消え、大きな黒い穴がぽっかりと空いていた。
※首はローマの英雄、アグリッパ。
歴史的にはパンテオン宮殿を建設させた政治家&軍人です。
デッサン用の石膏像では特に有名です。