アトリエと不安  「アグリッパと切株」
2018.02.11
やっと昨年、手作りで詩集を作りました。

「境界」という詩集からです。


「アトリエと不安」

私の不安は
いつもの冬の空にある
それは
雪曇りの或る日のこと
もしかして
天が真っ二つに割れて
その黒色の裂け目から
いっせいに
つめたい氷の欠片が
降りそそぐということだ

怯えながら
凍える幹に
片方の手で身体を支え
埋葬者のように
林間を彷徨(さまよ)い歩き
アトリエに辿(たど)り着く

悴(かじか)んだ右手は
神経病のように
幾度となく強く頷(うなず)いては
絵筆を振り回すのだ

私の不安は
アトリエの壁面にある
その壁は
全体が泥濘(ぬかるみ)のようで
棒状の自影が映った鏡があり
周りに枯れた樹木があり
ぼろぼろの布切れの纏(まと)わりつく
塊(かたまり)に人がいるからだ
そして
じっと私を見つめている







解説すると(笑)

絵を描いて生活するというのは
無謀なことであり、生活が突然、破綻するという不安があり、
日々、堅実に働いている人の厳しい目線があるのではという
ことなんですが・・・

写真「アグリッパと切株」・・黒潮町入野で撮影です。
2018.02.11 02:25 | 固定リンク | 文芸

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