倉橋孝彰詩集より 「廃船」
2018.03.30
 廃船

ほんとうに
船は生きていた

波のないとき
かっこよく
大海原を走り抜けた

嵐のとき
しょんぼり
港に佇(たたず)んでいた

五トン未満の
小さな船です

魚でいっぱい
ぎゅうぎゅうのイケス
破顔一笑の
漁師を運びました





ほんとうに船は
生きていた

トビウオが
船尾をかすめ
イルカが並走しました

魚が甲板を跳ね
巻き上げた網々
舳先(へさき)から
朝陽に包み込まれました

ディーゼルエンジンの
振動が懐かしい
船板を叩く波音が
いまでも聴こえます

ほんとうに船は
生きていた

「さよなら」の
挨拶は未だです





※倉橋孝彰 詩集:「境界」より 写真集:「象徴のモノクローム」から
2018.03.30 20:49 | 固定リンク | 文芸
タランチュラと浜辺
2018.02.26
外国との貿易がある港では、時々外来種の侵入で問題が起きています。

ヒアリなんかもそうですね。

わがビーチでも時として、こんな忘れ物があります。
海岸に放置するなどとんでもないことです。





なんとタランチュラです。
レッドニータランチュラです。

こんなところに放置するなど、頭がタランチュラですよね。

えっ? わたしが?・・・・

そこで、せっかくの貴重品ですから、瓶詰にして保存することにしました。






これを日ごろから憎く思っている人に・・・・なんて考えてはいけません。

とりあえず、梅と一緒に漬けると「タランプラム酒」ができるそうだという話もありますが、たとえ、一寸の虫にも魂がありますから、重く考えて逃がしてやることにしました。


どうぞ、ご無事に。
マネキンのいる風景 No.27 ビーチ2
2018.02.24
この撮影の帰り道、不思議な体験をしました。








このビーチの近くに無人駅があります。
その入り口に自動販売機がありますので、私はジュースを買って待合室で飲むことにしました。古びた駅舎でしたので、その雰囲気を感じてみたかったのです。

駅舎に入って驚きました。

沢山の人で待合室の座席はいっぱいでした。小さな駅舎でしたから、それでも二十人ぐらいの大人がひしめき合っていました。駅舎の外からはまったく気配が感じられなかったのです・・・・

駐車場は空っぽでしたし、話し声やなんらかの音さえも聞こえませんでした。
そして、奇異に感じたのは、全員が黒いサングラスをしていたのです。



わたしはあっけにとられて、しかし、動揺を見せまいとして、彼らの前を通り過ぎてホームの方へと歩きました。ほぼ全員が口をもぞもぞとさせて、独り言のように喋っています。それは唸りのようになって駅舎全体に響いていました。



ほんのしばらくして、列車がやってきました。
一両編成のディーゼル車でした。

<こんなにたくさんの人が乗れるのかな>
と私は冷静にそう思いました。

列車がホームで止まっても、彼らは誰も動きませんでした。列車のドアが開き、ホームには両親と小さな子供の三人連れが降りてきました。

両親は待合室の客に気付かないかのように通り過ぎましたが、子供は立ち止まって彼らの様子を見詰めていましたが、両親に促され駅舎の外へと引っ張り出されてしまいました。そのあいだに列車は発車しました。









私は待合室に立ち竦(すく)んでいました。
彼らは相変わらず念仏のように独り言を言いながら、古い木製の長椅子に座っていました。

やがて、大きな風の音が聞えてきて、「ヒュゥ~~ン」というつよい風切り音と共に何かが駅舎の傍に止まったような気配がしました。

彼らは一斉に立ち上がり、ホームに向かいました。
かれらは整然と列をつくって静かに歩いていましたが、私には後を追う勇気はありませんでした。






私一人待合室に残りました。


五分ほどして再び、大きな風切り音とど~んという振動があって窓ガラスがガタガタ揺れました。

冷静になった私は自分の時計をみて、そして駅に掲げてある時刻表をみました。下りの列車 18:30 上りは19:32 となっており該当する列車はありませんでした。もちろん、「通過列車にご注意」にも記載されていません。

現在は18:52です。親子三人連れは下り列車でした。次の下りは20:12です。いなかの無人駅のダイヤはこんなものなのです。

私は駅舎を出て、車に乗り込もうとしました。ふと、暗くなった空を見上げてみると一筋の光が海岸線から上方へと昇っていくのを目撃しました。

- CafeNote -