アグリッパのいる風景 No.1
2017.09.04
橋が現れると渡らなければならない。
川の向こうには、確かに、見たこともないような景色があるはず。

わたり始めるとその中間点に必ず顔がある。
じっとこちらを向いて「後悔しないか?」と問う。

「帰れないかもしれないぞ。」と脅かす。






私は決して屈しない。
大股で彼の首を跨(また)いで突き進む。

ふと、振り返ると首は私を見ている。
如何にも哀れな奴だという表情だ。

何度振り返っても首は私を見ていた。

橋を渡り切ってもう一度振り返ると
首は消え、大きな黒い穴がぽっかりと空いていた。





※首はローマの英雄、アグリッパ。
歴史的にはパンテオン宮殿を建設させた政治家&軍人です。
デッサン用の石膏像では特に有名です。
トルソーのある風景 No.6
2017.07.05
石垣の隙間をぬって花が咲いている。

幸せの黄色いリボンならぬ、幸せの花々であって
この前の道を登っていくと家々がある。

ふと、トルストイの言葉を思い出した。

「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである。」






この石垣の花々、きれいに咲いていますが、成長のための養分確保には相当難しいに違いない。いちど根付いたからには、後戻りできない。

坂道を登りながら、そう考えた人が居たかもしれない。
トルソーのある風景 No.5
2017.06.30
ここには時々宇宙船がやってくるそうだ。

遠方にみえる山々の向こう側から、真っ直ぐに
こちら側へとやってきて、私に問う。

「地球人ハ残酷ダト聞イタ。一人ヲ殺セバ殺人者ダガ、数万人ヲ殺セバ英雄トナルノカ?」

私は答える。
「学校の教科書ではそう教えている。」








「ソウカ。・・・ジャア、ゴキゲンヨウ。」
と宇宙船は去っていった。

黄金色に輝く宇宙船とその美しい軌跡を
追い続けながら、暫く眺めていた。

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