インスタレーション(10) 半島の木造骨格に集う
2016.12.19
題名:「半島の木造骨格にて手群は集う」



横波半島から眺める景色は雄大。
見慣れている私はそれほどにも思えないけど
太平洋の荒波もここからはおとなしい。


本荒れとなればそうでもない。
吹き上げる風は結構強いし、雲がこの辺りをかすめてゆく
遠くからでも波の勢いは迫力がある。



半島の頂上には木骨格の遊び場がある。
しかし、周囲は草が茫茫、人の気配はない。
白い手群は集う。
朽ちかけたテーブルの上で騒いでいる。
インスタレーション(9) ポルシェ911sと手群
2016.12.19
題名:「ポルシェ911sと手群」


かなり古いポルシェである。
911sというタイプ。

こういう車を所有している人は、けっこうなマニアか変人・奇人か、はたまたお金持ちのボンぐらいですが。





こちらはオブジェ探索モードなので、普段と違って話しかけ易くなっていたのか、勇気をもって(笑)声をかけた。
で、まあ、それほどの変人奇人ではないにしても、若干、マニアックな初老の元大工のオジサンでした。
見た目、親和性はかなり薄そうな方でしたが、リアのエンジンボックスをあれやこれやと観察していましたから
「故障ですか?」
なんて話から、いろいろ外車談義となりました。





ポルシェおじさん、私が手を並べて写真を撮ったそのあと、ちょっと違和感を感じたのか(笑)、お礼にコーヒーを誘いましたが、お断りされて、そそくさと帰ってしまいました。
インスタレーション(8) 手招きする手群
2016.12.19
題名:「手招きする蔵」

この蔵の前を通るたびに、蔵の中に私が過去に失われた何某のものが置かれているんじゃないかと思う。
例えば、十年前に亡くなられた高校時代のガールフレンドの弾いていたエレクトーンとか・・・
うっすらと埃をかぶった白い布が
突然はらりと落ちたりするのだ。


ここは彼女の地元だから、十分あり得る。


蔵の瓦の上の手群がつぎつぎに手招きをする。
そそくさと小走りで抜けるに越したことはない。
誰かが作業しているときもある。
それでつい誘惑に負けて、半開きの扉から覗き込むことがあった。





蔵のなか、高い小窓から射す陽がスポットライトのように、ひとりの少女と一匹の猫とが戯れている姿を映し出した。
少女は紫色の着物を着て黄色い帯をしていた。
猫は灰色に黒と白との縞模様である。
互いに顔合わせのように対面していたが、不意にこちらの気配に、縞模様の猫がこちらを見た。
その猫の瞳は、子供のころに覗き込んだ井戸の暗い底、濃い青緑色の水面にきらりと映った光と影と同じだった。
瞳は強い恨みの色であった。



あれから十数年、猫はもう寿命が尽きたかもしれない。しかし、少女は成年して大人になっただろう。
紫色の着物と黄色い帯はきっとこの蔵の行李の中にあるに違いない。
インスタレーション(7) トンネルで黙考する金髪人
2016.12.15
題名:「トンネルにて黙考する金髪人」
---
芸術で生業を立てようとする人々は
まずはトンネルに入ったも同然だ。
いつまでたっても潜ったままに
陽の見られない人生を歩むこととなる。
光といえば、せいぜい蛍光灯の仄明かり。
----
それは人生の終焉まで続くかもしれないのだ。
怖ろしく長いトンネル
金髪人は遂に黙考に入る。






----
トンネルを抜けるとそこは氷の国だった。
インスタレーション(6) 赤いポストに群がる白い手
2016.12.15
題名:「赤いポストに群がる白い手たち」
或る日のこと、私は町を歩いていた。
田舎町とはいえ、小さなビルや近代的な家屋だってある。
ハイブリット自動車だって走っている。
しかし、私は不意に周辺の景色が舞台の暗転のように強引に変わったのを目撃した。
忽ち目前に赤い郵便ポストが現れた。
そして、その背景は昭和の原風景であった。
まさに街角ピンポイント。



-----
眼を凝らすとなにやら白い小動物らしきものがポストに群がっている。
いや、小動物のように見えたのは人の手だった。
赤い郵便ポストに群がる白い手の集団。
-----
夕暮れの小一時間、人らしきは現れなかった。


- CafeNote -